ボンフイ・ウイのチャーミングでちょっと奇妙な世界

この「DACハワイアート通信」は、ホノルルのダウンタウン・チャイナタウン地区でアートやカルチャーを楽しめる施設の情報や、ハワイで第一線で活躍する現代アート作家ならびに作品を紹介するブログです。日本のみなさんに、最新のハワイの現代アート情報をお届けします。

ホノルルを拠点に活躍するアーティスト、ボンフイ・ウイの展覧会「The Whimsical World of Bonhui UY(ボンフイ・ウイのチャーミングでちょっと奇妙な世界)」が2月10日から3月18日までダウンタウンアートセンターで開催されます。

とってもチャーミングでちょっと奇妙な動物たち、イタズラっ子のように笑っている建物、そしてユーモラスな自画像、これらは全てハワイで大人気の中国系アメリカ人のアーティスト、ボンフイ・ウイさんのアート作品です。

本日ブログで取り上げるのは、展覧会の主役であるボンフイ・ウイさん。建築デザイナーとしてもアーティストとしても、有名なボンフイ・ウイさんの興味深い人生と、見る人を思わず笑顔にしてしまうアート作品をご紹介します。

自宅にて(作家近影)

ボンフイ・ウイさんは、7人兄弟の5番目としてフィリピンに生まれました。子供の頃から美術と数学が得意だったため、高校卒業後は台南にある国立成功大学へ入学し、建築家の道を目指し始めました。

大学で彼が夢中になったのが建築パースや建築の詳細なレンダリングを描くこと。図書館にあった建築雑誌からたくさんのインスピレーションを受け、大学2年生の時には台北のハーバード大学出身の建築家、王大中(ウォン・ダホン)氏のもとでインターンを経験し、ボンフイ青年は多くを吸収していきました。
また大学時代に、ボンフイは生涯の伴侶で最愛の人であるレオノーラさんと出会います。付き合い始めた頃から現在に至るまで片時も離れたことはないそうです。「大学で彼女は数学、私は建築を専攻していました。そして私たちの共通の夢はアメリカへ行くことでした」

大学卒業後の1965年、ボンフイさんはレオノーラと共に学生ビザで渡米。ニューヨークのプラット・インスティチュートに入学し、昼は建築事務所で働き夜は学校へ通う生活を始めました。

そんなボンフイさん夫婦が初めてハワイを訪れたのは1972年。ボンフイさんはAu, Smith & Haworth建築事務所に入所しました。

イオラニパレスのスケッチ

最初に担当したのは、スティーブ・アウ設計の商業施設「ワード・ウェアハウス」のコンセプト作り。「ワード・ウェアハウス」は2017年に閉鎖されるまで40年以上ローカルに愛されるショッピングスポットとなりました。

その後、ハワイで最も大きな建築事務所の一つであるメディアファイブに入所。1974年に念願のパートナーになりましたが、責任ある仕事が任される一方で、自分が得意とする建築パースや建築レンダリングなどを描く機会はどんどん減っていきました。

Dallas Museum, Ed Barnes Architects

そんな時に、ボンフイさんは、アメリカの著名な建築家であるエドワード・ララビー・バーンズから一通の手紙を受け取ります。それは手描きの建築パースを依頼したいという内容でした。描くことに飢えていたボンフイさんは会社を辞め、レオノーラと共に再びニューヨークへ旅立ちました。

その後の数年間、ボンフイさんは、フィリップ・ジョンソン、I.M.ペイ、デービッド・チャイルズ、エドワード・ララビー・バーンズサミュエル・M・ブロディなど、多くの著名な建築家から次々と依頼を受けることになり、建築イラストレーターとして大成功を収めました。

そして仕事がない時に、少しづつスケッチや絵画、コラージュの制作に挑戦していったのです。

Philip Johnson estate

建築設計が少し恋しくなってきていた1987年、彼はハワイのメディアファイブがデザインディレクターを募集していることを知ります。そしてボンフイさんは、”マーケティングや事務的な仕事をしないこと”を条件に再びレオノーラさんを伴ってハワイへ戻ってきました。ところが、1990年代初頭の不況で、会社は人員整理を始め、大きな仕事がなくなってしまいました。

そんな時、ボンフイさんの絵画やコラージュ作品を見た台北市立美術館から、個展のオファーがあったのです。そこで会社から1年間の休暇をもらい台湾へ行き、展覧会の準備をすることにしました。

コラージュ作品「フラガール」

台湾で、ボンフイさんのアート作品は熱狂的に受け入れられました。高く評価され、アーティストとして大いに注目を集めました。また同時にさまざまな建築家のデザイン・コンサルタントとして活躍することとなり、結局台湾には5年以上滞在することとなりました。

2015年には、台湾の恵まれない子供たちの教育を支援する非営利団体「Xue Xue Foundation」にて最大規模の個展を開催。

「Xue Xue Foundation」での個展の様子

同時に学校の先生を対象としたワークショップを開催しました。このワークショップは母国フィリピンでも開催され、好評を博しました。

ワークショップの様子

さらに3冊の作品集を出版し、 ハワイ、フィリピン、台湾で個展を開催するなど、アーティストとしてのキャリアを確実に、そして順調に積んでいきました。

段ボールやメタルシートをつかった動物作品の数々

また、ニューヨークに自宅を設計・建築する機会にも恵まれました。

ニューヨークの自宅のサイトセクション図

そして2023年現在、ボンフイさんは建築デザインからは引退し、アーティスト活動に励んでいます。

「私は楽しくて、遊び心のあるアートが好きなんです」とボンフイさん。
「それが制作の意図の全てで、ユーモアを交えた繊細な作風と新しい表現を追求しています。建築デザインをしている時は多くの制約を受けましたが、今の私は完全に自由なんです!」

デジタルドローイング「バットマン&ロビン」

さて、ダウンタウン・アート・センターでは、 2月10日から3月18日まで、メインギャラリーにてボンフイ・ウイさんの個展「The Whimsical World of Bonhui UY(ボンフイ・ウイのチャーミングでちょっと奇妙な世界)」を開催します。

この展覧会の売上の一部は この展覧会の売上の一部は、ダウンタウンアートセンターを支援するために使われます。

ぜひお越しください。

このブログはDAC Arts マガジン vol.2(2023年2月発行予定)の特集記事の抄訳になります。

詳しく読みたい方は、展覧会開催中に会場でマガジンをお受け取りください。

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